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自筆証書遺言作成の注意点

自筆証書遺言作成の注意点

自筆証書遺言を作成する場合、いくつかの注意すべき点があります。

形式的要件

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。(民法9681項)

①全文、日付、氏名の自書とは?

自筆証書遺言は遺言者本人が全文を直筆で書き(万年筆やサインペンなど文字が消えにくいもの)、自らが押印することが前提であり、本人以外の者が代筆したり、パソコンで作成し印刷したものはすべて無効となります。

また、遺言を書く用紙ですが、なにがしかの文字が印刷されている紙を使用すると、「全文を自分で書く」との要件にあてはまらなくなるとして無効になることがあるため要注意です。

②日付

必ず○年○月○日と書く必要があり、例えば、○年○月吉日と書くと無効となります。

年号は和暦でも西暦でもOKです。


③氏名

自分の氏名を戸籍に記載されているとおり厳密に書くことです。

通称、ペンネームなどは用いないほうが良いでしょう。


④押印

印鑑の種類に特に制限はありませんが、可能な限り実印を押したほうが無難です。

一般的な認印やシャチハタ印は避けたほうがよいでしょう。


⑤加筆・修正

遺言書の内容を変更したり、修正する場合は、単に二重線を引いて書き直しただけではその効力が生じないため注意が必要です。

遺言書の加筆・修正については、一般的な文書の訂正よりも非常に厳格なことが法律で要求されています。

修正した場合は、例えば、遺言書の空いているスペースに「○○行目○○文字削除し○○文字追加した」と追記し自書で署名するとともに、修正した部位に印を押さなければなりません。

自筆証書遺言の保管

 自筆証書遺言を作成したら、封筒の表面に「遺言書」と明記し封筒の中に入れ、封じ目に契印をします。作成した遺言書は、相続人が発見できる場所か信用できる人に預けることになります。

自筆証書遺言の方式の緩和

 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律のうち、自筆証書遺言の方式の緩和に関する規定が、平成31113日から施行されています。

 その内容は、これまで全て自書し押印を求めていたものを、「自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、その目録については自書することを要しない。この場合において、遺言者はその毎葉に署名し印を押さなければならない。」とされました(改正後の民法9682項)。

 これにより、遺言書の末尾に添付されることがあるいわゆる遺産目録については、各ページに署名し、印を押したものであれば、パソコンで作成したもの、遺言者以外が代筆したもの、不動産であれば登記事項証明書を添付してこれを目録とするものであっても認められることとなりました。同目録の修正等については、前記⑤と同様です(改正後の民法9683項)。

 なお、この自筆証書遺言の方式の緩和については、平成31113日以降に作成された遺言書から適用となります。

また、内閣府の発表によると「自筆証書遺言」のデジタル機器での作成が解禁される方向で議論が進んでおり法務省が有識者会議を設け、民法改正のための議論を本格化させています。デジタル機器での作成については、本人確認や改ざん防止の仕組みつくり等の対策が必要になりますが、制度化されれば、今までよりも容易に作成できるようになり便利な制度になると思います。

法改正の進展があれば当コラムでもアナウンスさせていただきます。現制度で作成する遺言書作成についてのご相談や包括的な生前対策等についても、当事務所でお手伝いさせていただきますので、是非お気軽にお問い合わせください。


参考文献:内閣府「第2回デジタル基盤ワーキング・グループ 議事次第」

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