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空家(あきや)を放置するリスクと対策<前編>

空家(あきや)を放置するリスクと対策<前編>

今回は、社会問題となっている「空家」問題を取り上げます。

2018年の総務省の統計では、空き家数は848万9千戸と過去最多となり、全国の住宅の13.6%を占めていることが分かりました。

出典:総務省統計局ホームページ

 

これは、九州全体の面積に匹敵し、今後も増え続けるといわれています。

では「空家」の一体何が問題視されているのでしょうか?

 

今回は空家のリスクについて一緒に考えてみましょう。

 

1.空家になってしまう3つの要因

所有する不動産が空家となってしまう要因には、以下3つが挙げられます。

①所有者が死亡した後に相続した家を、相続人がそのまま放置する

②高齢者が自宅から介護施設や高齢者住宅へ移動する

③家を取り壊して更地の状態にすると固定資産税等の特例が外れてしまうので、税金の負担軽減のためにあえて残している

少子高齢社会の日本では、上記を理由として今後さらに空家が増えていくことが考えられます。

 

2.空家等対策の推進に関する特別措置法

空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家特措法」という)は、管理されていない空家等が防災・衛生・景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることから、地域住民の生命、身体または財産を保護することを目的として2015年2月26日に施行されました。
これは適切に管理されていない空き家を「特定空家」に指定し、行政の指導などの介入ができるようになる法律です。

(1)”空家等”とは?

居住その他の使用がなされていないことが常態である建築物及びその敷地を指します。

 

(2)”特定空家”とは?

①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

著しく衛生上有害となるおそれのある状態

③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

 

以上4つの状態にある空家等が「特定空家」に指定される基準とされており、最終的な判断は市町村が行います。 

 

3.”特定空家”に指定されるとどうなる? リスクは?

空家特措法によると、市町村が調査した結果特定空家として判断された場合、市町村長は特定空家の所有者に対して、助言・指導・勧告(ここまでは行政指導)・命令(行政処分)の順番で改善を要求します。

(1)罰金が科せられる

所有する物件が特定空家に指定されると、次のような場合に罰金が科せられます。

①市町村の立入調査を拒んだり、妨げる等した場合

20万円以下の過料が科せられます。

②市町村長の命令に違反した場合

50万円以下の過料が科せられます。


さらに、行政代執行で建物を取り壊すこともあります。
※2021年時点での「助言・指導」まで行われた件数は約6000件となっており、2015年時点の「助言・指導」件数、約2000件の3倍近い件数となっています。行政が空家対策に力を入れていることが感じられます。

 

(2)防犯上のリスク

明らかに人が住んでいないことが一目でわかる状態になっていると、不法投棄・放火・不法侵入・不法滞在等を招く恐れがあります。
また、落書きや雑草の繁茂などにより周辺の景観を悪化させ、土地自体の資産価値をも下落させることになるのです。
さらに建物の倒壊等により人にケガをさせてしまった場合には、損害賠償責任を負うことになるでしょう。

 

(3)税法上のリスク

固定資産税の課税価格は、土地に建物が建っていると通常の6分の1に軽減される税の特例があります。


そのため、空家のままにしておけば税負担の優遇措置を受け続けることができるので、空家が放置される原因ともなっています。

 

ただし、「特定空家」の指定がされると、固定資産税の軽減の特例がなくなり、通常の評価額を基準として課税(つまり現行の6倍)されることになります。
この軽減が外れるのは、「特定空家」に指定された翌年からとなります。

 

4.空家問題と相続登記義務化について

令和6年(2024年)4月1日からは、「相続登記の義務化」が開始されます。登記されている土地・建物については、相続が開始した場合、その登記(相続による名義変更)を行うことが義務となるのです。

 

相続登記義務化の背景には所有者不明土地問題があります。
これは、登記の名義人が実際の所有者になっていないことにより(登記名義人はすでに亡くなっているケース等)、直ちに所有者を確認できないことも所有者不明土地問題の1つの原因となっています。もちろん、こうした問題は土地だけでなく、建物にもいえます。

 

今回特集した空家問題についてですが、空き家の多くは「管理放棄」された建物であることが多く、さらには「管理放棄」に加えて、現在の所有者(管理者)が直ちにわからないというものがあります。
「所有者がわからない」というのは、下記2つのケースに分類されます。

 

①登記されている所有者が所在不明であるケース 

②登記されている所有者が既に死亡しており相続人の捜索が必要なケース

相続登記が義務化されることとなり、②についての対策が取られたことになります。いままでは、建物を利用する予定は無い、売却予定は無いなどの理由で相続登記せず放置していたケースも少なくありませんでした。
相続登記の義務化においては、その対応を検討する必要があるでしょう。

5.まとめ

親から相続した不動産が空家となり、「特定空家」になってしまうと、税負担等の様々なリスクが考えられるため、早めに家族で話し合い、対策を講じることが重要です。

 

空家をお持ちの場合は、税金負担の問題だけでなく、どのように管理するか、場合によっては売却するのかなど、早めに家族間で話し合うことが重要です。


「相続登記義務化」も開始されることで、「負の不動産」であっても相続登記を放置することはできなくなります。


司法書士は登記の専門家です。

そして、司法書士法人リーガル・フェイスの相続部署は相続登記の専門家集団でもありますのでぜひお気軽にお問い合わせください。

 

※こちらのコラムは以前掲載したコラムの改訂版となります。

 

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