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事実婚・同性のパートナーがいる人のための生前対策

事実婚・同性のパートナーがいる人のための生前対策

事実婚や同性のパートナーは日本の法律で認められた配偶者ではないため、相続する権利が認められません。

それでは、事実婚や同性のパートナーに財産を残したい場合にどのような生前対策をとることができるのでしょうか?

目次

1 相続人とは

相続人とは、亡くなられた方の財産に属した一切の権利義務を承継する者をいいます。
民法では、配偶者と①子、②直系尊属(両親)、③兄弟姉妹が相続人と定めております。
これ以外の者は相続人となることはできません。
また、自由に相続人を追加することもできません。

2 配偶者とは

配偶者とは、法律上の婚姻をしているもの(婚姻届を提出したもの)をいいます。
婚姻届を提出していない事実婚のパートナーや現在の日本法では婚姻が認められていない同性のカップルのパートナーは相続人となることができません。
そのため、相続により財産を取得することができないのです。

事実婚では、夫婦関係同然の生活を営んでいる場合には、婚姻している際に準じた扱いをするという考え方がありますが、相続については相続人とは認められません。

同性カップルでは、その関係を公的に認めるパートナーシップ制度を導入する自治体も増えておりますが、この制度では法的な効力までは認められておらず、
相続人となることはやはり認められていません。

そのため何ら生前対策を取らずに相続が発生した場合には、事実婚・同性のパートナーは遺産を何も取得できないことになってしまいます。

3 特別縁故者とは

一方、亡くなった方に相続人がいない場合には、事実婚、同性パートナーは特別縁故者として遺産を取得できる可能性はあります。

特別縁故者とは、下記3つの類型があります。

■被相続人と生計を同じくしていた者

■被相続人の療養看護に努めた者

■その他被相続人と特別の縁故があった者

これは、家庭裁判所に相続人不存在として相続財産管理人を選任してもらい、数か月間の公告清算の手続きを行って、特別縁故者として相続財産の分与の申し立てを行い、家庭裁判所がパートナーを特別縁故者と認めた場合に初めて遺産の取得ができるというものです。

ただし、特別縁故者として認められるか、特別縁故者と認められた際にどのくらいの遺産を取得できるかは家庭裁判所の判断次第となり、未知数となります。

4 生前対策

そこで事実婚のパートナー、同性のパートナーに財産を残すには生前に対策を講じることが必要となります。
その方法としては①遺言、②死因贈与による方法が考えられます。

①遺言

遺言とは、民法に定められた方式に従って行う必要があり、遺言をした方が亡くなったときに財産を特定の人に受け継がせるというものです。

遺言は、遺言者が一方的に行うもので、パートナーの同意を得る必要はなく、パートナーや他の人に内容を知られずに行うことも可能です。

一般的には、自筆証書遺言か公正証書遺言を用います。

2つの遺言の詳細はこちらの記事よりご覧ください。

関連記事「「遺言のすすめ」

遺言をした方が亡くなったときに遺言を使用して遺産をどう処分するか決めることを遺贈といいます。
遺贈には、特定遺贈と包括遺贈があります。

特定遺贈

特定遺贈とは、「●●所在の不動産」や「〇〇銀行の預貯金」など、個別の財産を指定して受け継がせる方法です。
特定の財産だけをパートナーに受け継がせたい場合に向いていますが、個別に財産を特定しなければなりません。
一方、借金などの債務は基本的に承継しません。

包括遺贈

包括遺贈とは、財産を「全部」「3割」などと割合を示して受け継がせる方法です。
相続人と同一の権利義務を有するとされており、特に財産の「全部」と指定して遺贈すれば相続人と同じように承継させることができます。
一方借金などの債務もすべて承継することには注意が必要です。

特定遺贈とするか包括遺贈とするかは、良く検討して行う必要があります。
遺言は遺言をした方が亡くなるまでは、いつでも撤回や変更が可能ですので、遺言してから気が変わった場合は変更や撤回をすることができますのでご安心ください。

②死因贈与

死因贈与とは、生前に他方のパートナーと合意して行う、
自分が死亡したときにパートナーに財産を贈与するという内容の契約です。
死因贈与契約によっても、遺言と同じようなことを行うことができます。

遺言との違いは、死因贈与は契約のため、パートナーと合意する必要があることと、そのため死因贈与の内容は当然パートナーに知られることになります。
また、死因贈与契約の内容によっては、撤回や変更ができないこともありますので注意が必要です。

5 まとめ

このように遺言や死因贈与を用いることにより、相続権のない事実婚や同性のパートナーに財産を残すことができます。
遺言と死因贈与のどちらとするかは、具体的な状況、法律上要求されること、
発生する税金についてよく検討して決めることになります。

リーガル・フェイスでは、無料相談も行っております。
税金面に関しては税理士をご紹介することもできますので、お気軽にお問い合わせください。

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