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相続土地国庫帰属制度の概要及び運用状況【令和5年4月27日施行】

相続土地国庫帰属制度の概要及び運用状況【令和5年4月27日施行】

こんにちは!相続課の栗田です。
令和5年4月27日より施行された相続土地国庫帰属制度について、弊所にも多くのお問合せを頂いており、皆様の関心の高さを肌で感じております。

 

弊所でも、制度開始前に概要をご紹介いたしました。

こちらも今回のコラムと併せてご参考になさっていただければと思います。

【新制度】いらない土地は国に返す!「国庫帰属制度」が2023年スタート

 

先日、法務省より「相続土地国庫帰属制度の統計」として、相続土地国庫帰属制度の運用状況に関する統計(令和5年12月28日現在:速報値)が公開されましたので、本コラム5.にてご紹介いたします。

1.概要

この制度は、所有者不明の土地の発生を予防する方策の一つとして創設されたもので、「相続又は遺贈により土地の所有権を取得した相続人」が、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度です。
つまり、相続した土地が不要な場合、その土地の所有権を、一定の負担金を収めて国に帰属させることができる制度です。

2.背景

この制度が創設された背景として、次のような現状が指摘されています。

 

【創設される背景】

■土地利用ニーズの低下等により、土地を相続したものの、土地を手放したいと考える者が増加している。

■相続を契機として、望まずに土地を取得した所有者の負担感が増しており、管理の不全化を招いている。

 

法務省HP 相続土地国庫帰属制度の概要より引用

3.国庫帰属までの手続の流れ

手続の主な流れは、以下の通りです。

STEP1 事前相談

STEP2 申請書の作成・提出(審査手数料の納入)

STEP3 法務大臣(法務局)の要件審査(書面審査・実地審査)

STEP4 承認・申請者が負担金を納付

STEP5 国庫帰属

 

 

法務省HP 相続土地国庫帰属制度の概要より引用

STEP1 事前相談

対象の土地の管轄法務局(本局)で、対面または電話での具体的な相談をすることができます(予約制)。

国に引き渡したい土地が遠方にある場合、近隣の法務局(本局)にも相談が可能です。

 

STEP2 申請書の作成・提出(審査手数料の納入)

審査手数料分の収入印紙を貼り付けた申請書を作成し、所在する土地を管轄する法務局の本局の窓口に提出します。

郵送での申請も可能です。

① 承認申請をすることができる人

「相続又は相続人に対する遺贈により土地の所有権又は共有持分を取得した人等」です。

 

具体的には、まず

「相続又は相続人に対する遺贈により土地の全部又は一部を取得した人」や、

「相続又は相続人に対する遺贈により土地の共有持分の全部又は一部を取得した共有者」が、該当します。

施行前の相続も対象となるため、例えば数十年前に相続した場合でも申請することができます。

 

共有の場合、共有者全員からの申請が必要です。

特筆すべき点は、共有者の中に「相続等以外の原因(売買など)により持分を取得した者(法人を含む)」がいる場合でも、その者を含めて共同で申請することができる点です。 

 

 

法務省HP 相続土地国庫帰属制度の概要より引用

②承認申請書・添付書類の提出

以下の事項等を記載した承認申請書及び添付書類を提出して申請します。

・申請者の氏名または名称及び住所、

・承継の理由

・承認申請をする土地の所在、地番、地目、及び地積

 

③審査手数料

承認申請書の提出と共に審査手数料の納入が必要です。

審査手数料は、土地一筆あたり14,000円です。

申請時に、申請書に審査手数料の額に相当する額の収入印紙を貼って納付します。

 

STEP3 法務大臣(法務局)の要件審査(書面審査・実地審査)

法務大臣(法務局)において、提出された書面を審査し、申請された土地に出向いて実地調査が行われます。

① 審査の内容

・申請が申請権限を有する者によって為されているか否か
・国庫帰属の承認ができない土地(第2条3項各号及び第5条1項各号)の要件に該当しないか、などです。
国庫帰属の承認できない土地の要件(詳しい概要はこちらのコラムをご覧ください)

② 実地調査等

必要な場合には、該当の土地及びその周辺の土地の実地調査や、申請者その他の関係者からの聴取や資料の提出を求めるといった調査も行われます。

また、関係行政機関や地方公共団体の長、関係のある公私の団体等の関係者に対し、資料の提供・説明・事実の調査の援助等の協力を求めることができます。

STEP4 承認・申請者が負担金を納付

➀ 承認申請の却下・不承認の通知

審査を踏まえ、帰属の承認・不承認の判断の結果について、申請者に通知が送付されます。

調査に応じなかったり、土地が申請の要件を満たしていないなどの理由で、申請却下や不承認となった場合は、その旨の通知が為されます。

いずれの場合も、行政不服審査・行政事件訴訟で不服申立てができます。

尚、調査妨害等をした場合には、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金の罰則規定があります。

②負担金の通知

審査の結果、帰属が承認された場合、法務大臣から承認通知及び負担金額の通知がなされます。 

要件審査を経て承認を受けた方は、負担金の通知を受け、期限内(負担金の通知が到達した翌日から30日以内)に日本銀行へ納付します。

承認通知から30日以内に納入がない場合、承認取消しとなります。

③負担金の金額

負担金は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した、10年分の土地管理費用相当額とされています。

(※1)
 市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域又はおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域をいいます(都市計画法(昭和43年法律第100号)第7条第2項)。
(※2)
 用途地域とは、都市計画法における地域地区の一つであり、住居・商業・工業など市街地の大枠としての土地利用が定められている地域をいいます(都市計画法第8条第1項第1号)。
(※3)
 農用地区域とは、自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域として指定された区域をいいます(農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)第8条第2項第1号)。

 

法務省HP 相続土地国庫帰属制度の負担より引用

 

市街化区域内の宅地の場合、100㎡で約55万円、200㎡で約80万円

市街化区域内や農用地区域等の田・畑の場合、500㎡で約72万円、1000㎡で113万円

原野等は、面積にかかわらず20万円となっています。

 

法務省のホームページに掲載されている「負担金の自動計算シート」を利用し負担金の額を計算することもできます。

 

STEP5 国庫帰属

申請者の負担金納入と同時に、当該土地の所有権は国に移転します。
国への所有権移転登記は、国によって為されます(住所変更登記や相続登記が為されていない場合、国が代位登記を行います。 )
国庫に帰属した土地は、国が管理・処分します。

 

4.国庫帰属制度を利用するために必要な費用

国庫帰属制度を利用するために必要な費用は大体いくらか知りたいというお問合せをよくいただきますが、その金額は、個々の土地の現状により大きく左右されます。

 

上記で挙げた

①承認申請書提出時に払う審査手数料(土地一筆あたり14,000円)と

②承認後に払う負担金(10年分の土地管理費用相当額)のほか、

③土地を国庫帰属法の対象に該当させるための事前準備の費用

が必要になる場合が多々あります。

 

例えば、

・該当の土地上に建物が現存している場合は建物解体費用

・隣地との境界があいまいな場合はその確定費用

などが挙げられます。

 

5.相続土地国庫帰属制度の運用状況に関する統計

法務省より「相続土地国庫帰属制度の統計」として公開されました、「相続土地国庫帰属制度の運用状況に関する統計」(令和5年12月28日現在:速報値)をご紹介いたします。

 

(1)申請件数(令和5年12月28日現在:速報値)


➀総数 1,505件
②申請のあった土地の地目別割合 

(2)帰属件数(令和5年12月28日現在:速報値)

➀国庫帰属された土地件数の総数 85件
②国庫に帰属された土地件数の種目別割合

③帰属土地が所在する都道府県

 

北海道、宮城県、秋田県、福島県、群馬県、埼玉県、千葉県、新潟県、

富山県、石川県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、

岡山県、広島県、徳島県、香川県、愛媛県、佐賀県、長崎県、熊本県、

宮崎県、鹿児島県

(3)却下・不承認件数(令和5年12月28日現在:速報値)

 

➀却下件数 0件

②不承認件数 6件

(不承認の理由)

・1件:民法上の通行権利が現に妨げられている土地(施行令第4条第2項第1号)に該当

・5件:国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地(施行令第4条第3項第4号)に該当

(4)取下げ件数(令和5年12月28日現在)

 

➀取下げ件数  123件

(取下げの原因の例)

・自治体や国の機関による土地の有効活用が決定

・隣接地所有者から土地の引き受けの申出あり

・農業委員会の調整等により農地として活用される見込みとなった

・審査の途中で却下、不承認相当であることが判明

 

(5)帰属・却下・不承認・取下げ件数合計に占める各件数の割合

 

令和5年12月28日現在(速報値)において、国庫帰属された件数、申請が却下された件数、不承認となった件数及び取り下げられた件数の合計値に占める各割合は、以下のようになっております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6.おわりに

国庫帰属制度を利用するための要件は非常に厳しいため、利用する前に十分な検討が必要な場合が多いようです。

特に、登記名義人が亡くなられてから数十年経過している場合などは、相続人を確定するためには煩雑な作業を伴い、多大な時間を要する場合も多いと考えられます。

そのような場合には、是非弊所にご相談いただければと思います。

【相続登記おまかせプラン】

 

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