こんにちは。司法書士法人リーガル・フェイス相続課の北です。
今回のコラムは「相続人のなかに未成年者がいた場合の相続手続」について紹介させていただきます。
目次
1.未成年者が相続人になるときの対応方法とは
未成年者が相続人となる場合の具体的なご説明に入る前に・・・
令和4年4月1日より成年年齢が20歳から18歳に引き下げられましたので、以下の説明で出てくる未成年者は、18歳未満の者を指すことになります。
ご注意くださいませ。
なお、2022.2.25付の弊所コラムにて「18歳から“大人”に!成年年齢引き下げによってできるようになること・できないこと」を掲載しておりますので、こちらも併せてご確認ください。
では、本題に戻りますが、未成年者が相続人になった場合に、どうすればいいのか分からない方も多いのではないかと思います。
そこで今回は、相続人に未成年者がいる場合だからこそ必要な法律上の手続詳細をご説明いたします。そもそも、未成年者が法律行為(契約等)をする場合は、通常は「法定代理人」として親が代理で手続きを行うことになります。
しかし、相続の場合も親が代理をすればよいのでしょうか?
ポイントは「遺産分割協議」が必要かどうかということになります。
①遺産分割協議が不要な場合
遺産分割協議が不要な場合には、未成年者が相続人の場合でも親が代理することが可能です。この場合、民法で定められた「法定相続分」で財産を分けることになります。
②遺産分割協議が必要な場合
一方、遺産分割協議を行う場合(親子で相続人となるとき)は「特別代理人」の選任が必要です。
次の項目では、未成年者が相続人の場合の遺産分割協議について詳しくご説明いたします。
2.未成年の相続人がいる場合の遺産分割協議
未成年者が相続人になる場合、未成年者自身では遺産分割協議を行えないため、法定代理人(通常は親)が代理して進めることになります。しかし、親と未成年である子供が同時に相続人になる場合は(このケースが多いかと思います)、親が子を代理することができません。
たとえば、父親が亡くなり、母親と子供が相続人となる場合、法定相続分では母親が2分の1、子供が2分の1ずつ相続します。遺産分割協議によって、法定相続分とは異なる持分での相続とする場合は、親子で持分の増減の利害関係を持つことになるので、親が子を代理することはできないのです。
それでは、未成年者の代理人は誰になるのでしょうか。
家庭裁判所が選任した「特別代理人」が未成年者の代理人となって遺産分割協議を行うことになり、未成年のお子様が複数名いる場合は、そのお子様一人一人に、個別に特別代理人が必要となります。
3.「特別代理人」の選任申立て手続き
申立て
下記が「特別代理人」選任の申立てに関する詳細です。
申立先 | 未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所 |
申立人 | 未成年者の親権者、利害関係人(親権者と未成年者以外の相続人等) |
費用 | □収入印紙800円分×未成年者の人数 □裁判所からの連絡用郵便切手代 |
必要書類 | □特別代理人の選任申立書 □未成年者の戸籍謄本 □親権者の戸籍謄本 □特別代理人候補者の住民票か戸籍の附票 □遺産分割協議書案 □遺産分割協議書案に記載した財産の資料 □利害関係を示す戸籍謄本等(利害関係人が申し立てる場合) |
「遺産分割協議書案」作成時の注意点
特別代理人選任申立て段階で遺産分割協議書案を家庭裁判所に提出することになりますが、内容に関して、非常に重要なことがあります。
遺産分割協議書案は、原則として未成年者の法定相続分は最低限確保する内容で作成する必要があります。未成年者に著しく不利な遺産分割協議書案では、家庭裁判所が特別代理人の選任を許可しない可能性もあるからです。
ただし、遺産の内容によっては、必ずしも法定相続分を確保することができないこともあります。そのような場合には、特別代理人選任申立書などに、親が法定相続分よりも多く財産を受け取ることの合理的な理由等を明記することが必要となります。
申立てから選任まで、約1~2か月!
未成年者特別代理人選任の申立てをしてから審判が下りるまで、1か月から2か月くらいかかるといわれています。
相続税申告がある場合は、被相続人が亡くなったことを知ってから10か月以内が申告期限となりますので、特別代理人が選任されるまでの期間を踏まえますとスケジュールがタイトになります。
是非お早目に、専門家にご相談されますようお願いいたします。
4.未成年相続人が相続放棄したいときは?
次に、亡くなった人が借金を遺しているなどの事情で未成年の相続人が相続放棄をする事例をご説明いたします。
この場合、未成年者の親権者が相続するのか相続放棄をするのかによって対処方法が異なります。
未成年者も親権者も相続放棄する場合
この場合は、子供の相続放棄によって親の相続分が増えるわけではなく、親子間での利益の対立がありません。この場合は未成年者のための特別代理人の選任は不要であり、親自身が未成年者の法定代理人として相続放棄することができます。
未成年者だけが相続放棄する場合
たとえば、配偶者が借金を遺して死亡した時に、妻は全部相続するが、子供には相続放棄させようとする場合などが考えられます。
この場合は、子供が相続放棄をすることで子供の親権者である妻の相続分が増えるので、子供と妻の利益が対立することになり、妻自身が子供の代理人として相続放棄することはできず、特別代理人の選任が必要となります。
5.未成年相続人と相続税
未成年者の相続人が遺産相続をする場合には、相続税の一定額が免除される「未成年者控除」という制度があります。
計算方法については、いつ相続が発生したのかによって控除する年数も異なりますので、詳しく知りたい場合は、税理士に相談してみるのが良いでしょう。
まとめ
相続人の中に未成年者がいる場合で、親権者も一緒に相続人となる場合は、親権者が未成年者の代理人として遺産分割協議を行うことはできません。
未成年者のための特別代理人選任手続きに要する時間を考えますと、余裕をもって進めることが必要となります。
ご相続後の諸手続きを回避する一つの方法としては、遺言書を遺されることもご検討頂ければと思います。
遺言書があれば、未成年者への有利不利関係なく、遺言書の内容通りに遺産が引き継がれることになります(遺言内容によっては、遺留分の問題がございます)。
ご相談含め早めのご準備をしていく必要がありますので、いつでもお気軽にご相談頂ければと思います。
千葉県勝浦市生まれ、東京育ち。平成17年に司法書士試験合格。不動産会社・金融関係の企業勤務を経て、相続関連の業務に携わりたいという想いから司法書士法人リーガル・フェイスに入社。主な資格は司法書士、宅地建物取引主任者、貸金業務取扱主任者。趣味は自宅で行うヨガ。好きな食べ物はリーフパイ、お好み焼き、酢めし、磯辺焼きなど。
実際にお手伝いした事例はこちら
「相続人の一人が未成年者でした。どうしたら良いでしょうか」