こんにちは。相続・商業課の栗田です。
不動産を売ったり、抵当権等を設定したりする際の登記申請手続には、「権利証」を法務局に提出する必要があります。しかし、万が一「権利証」を紛失してしまったとしても、法務局に再発行してもらうことはできません。
今回は、このような場合の手続の一つである「資格者代理人による本人確認情報の提供」の制度についてご説明します。
目次
1.どんな場合に作成される?
「本人確認情報」が、資格者代理人(司法書士等)によって作成されるのは、法務局に対して不動産登記申請をする際に、本来ならば申請書とともに「権利証(登記済権利証または登記識別情報)」(不動産の権利証は紛失しても大丈夫? 失くした場合の対処法)の提出が必要であるにもかかわらず、紛失などの理由により提出できない場合、です。
2.「権利証」の提出が必要な登記申請とは?
そもそも、権利証の提出が必要になるのは、どのような登記申請の場合でしょうか。それは、登記申請者が、該当の不動産に対し、「自身が権利を持っていること」を証明した上で申請することが必要な登記申請の場合です。
例えば、不動産を売ったり、抵当権等の担保権を設定したりする際の登記申請では、ご自身がその不動産の所有者であることを証明するため、下記の書類の提出が必要です。
①実印の捺印がある登記申請書(または、司法書士への委任状)
② ①に捺印された実印の印鑑証明書(発行後3か月以内)
③「権利証(登記済権利証や登記識別情報)」
3.司法書士などの資格者代理人による「本人確認情報」の提供とは
「本人確認情報」は、申請人が確かに「所有権などの権利を持っている本人(登記名義人」であることを証明するものです。代理人として登記申請する司法書士などの資格者が、登記の申請人となる人と面談し、運転免許証などの本人確認書類の提示を受け、間違いなく「登記名義人」であると判断した場合に作成します。
「本人確認情報の提供」の制度とは、代理申請する司法書士等が適切に作成した「本人確認情報」を、「権利証」の代わりに法務局に提出することで、登記手続を進める制度です。
4.登記申請に必要な権利証を提出できない場合は?
登記申請に必要な権利証を提出せずに、売却や抵当権設定等の登記申請をするには、上記の「資格者代理人による本人確認情報の提供」という方法を含め、以下の3つの方法があります。
①法務局による事前通知
②公証人による本人確認
③司法書士などの資格者代理人による「本人確認情報」の提供
以下、表により不動産売却の登記申請をする場合で比較してみましょう。
①法務局による事前通知制度
法務局による事前通知制度は、「権利証」による本人確認に代えて、法務局から登記名義人あてに事前通知をすることで、本人確認をする制度です。
具体的な手続としては、まず、権利証を提出せずに申請した登記名義人の住所地宛に法務局が「事前通知書」(※下みほん参照)を本人限定受取郵便にて郵送し、「登記の申請があった旨」及び「その申請の内容が真実であるときは2週間以内にその旨の申出をすべき旨」が通知されます。この通知に対して、登記名義人が2週間以内に「その申請に間違いがない旨の申出」を法務局に返送した場合に、登記手続きが進められるという制度です。
メリット・デメリット
この制度は、費用がかからない点がメリットですが、申請から登記手続完了までに一定の時間を要するというデメリットがあります。
また、売主が、期間内に事前通知書を返送しなかった場合は、登記申請が取下げまたは却下となり、買主に名義を移すことができなくなるというリスクがあります。そのため、「売買による所有権移転登記」や「融資による担保権の設定登記」など、金銭の移動と登記申請が、「同時もしくは一連の手続として行われることが要請される登記」では、使われることはほぼありません。
②公証人による本人確認
公証人による本人確認は、公証人が売主の本人確認を行う制度です。
具体的な手続きとしては、売主が公証人の面前で登記申請の委任状等に署名・捺印し、公証人から書類が真正なものであることの認証を受ける流れとなります。
メリット・デメリット
公証人による本人確認の制度は、費用が抑えられる点がメリットですが、平日に公証役場へ出向く必要があるというデメリットがあります。
③司法書士などの資格者代理人による「本人確認情報」の提供
司法書士などの資格者代理人による「本人確認情報」の提供の制度では、司法書士等は、「本人確認情報」を作成するには、その前提としてとしての本人確認において、本人確認書類(運転免許証等の各種公的証明書)が偽造されたものでないかを厳格にチェックし、その真正性や有効性を慎重に確認する必要があります。
その上で、面談にて、申請人が確かに「当該不動産の登記名義人である」ことを確認するため、権利を取得した経緯など様々な事項の聴き取りを行います。
司法書士にとって「本人確認情報」の作成は、非常に重い責任を伴うものとなっております。
メリット・デメリット
権利証の提供ができない登記名義人にとって「本人確認情報」提供制度を利用することは、ある程度の費用はかかりますが、確実に登記名義を移転させることができるというメリットがあります。また、関係者にとっても、不動産取引の大前提である取引の安全が確保されるという安心感につながるものです。
デメリットとしては、先述のように司法書士にとって「本人確認情報」の作成は非常に重い責任を伴うため、作成費用が比較的高額になってしまう点です。
まとめ
以上、今回は「資格者代理人による本人確認情報の提供」の制度についてご紹介いたしました。
「権利証」が見当たらない場合でも、登記申請のお手伝いをすることができますので、よろしければ弊所までご相談ください。
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金融機関を退職後育児に専念していたが、子育てが一段落し、人生の先輩であるご高齢の方々のお手伝いがしたいという思いから、相続の業務に携わることに。別の事務所で4年間の実務経験を積み、令和元年11月リーガル・フェイスへ入社。趣味は庭先の花々を見ながらの住宅街ウォーキング・花の世話・テニス・卓球・ドライブ・住宅の間取りを考えること。好きな食べ物はナッツとチョコとチーズケーキ。