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18歳から“大人”に!成年年齢引き下げによってできるようになること・できないこと

18歳から“大人”に!成年年齢引き下げによってできるようになること・できないこと

こんにちは。相続課の鶴巻です。今回は2022年4月1日から施行される成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする民法改正についてご紹介したいと思います。成年年齢引き下げによって今後どのようなことが変わってどのようなことが変わらないのかを詳しくご説明したいと思います。

1.成年年齢とは何を意味するのか

「成年」という言葉で皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。大人になる、お酒が飲める、タバコが吸えるetc・・・、一般的にはそのようなことを思い浮かべる人が多いかと思います。

民法の定める成年年齢とは「単独で契約を締結することができる年齢」という意味と「親権に服することがなくなる年齢」という2つの意味を持っています。この年齢は、日本では明治9年以来、20歳と定められてきました。

この成年年齢を20歳とする国は世界共通かといえば、決してそうではありません。逆にOECD(経済協力開発機構)加盟国だけでいえば、アメリカやイギリスなど32か国が成年年齢を18歳としているのに対し、20歳としているのは日本とニュージーランドの2か国だけと少数の国に分類されていたのです。

2.民法改正の経緯

平成30年6月13日、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立しました。

近年、憲法改正国民投票の投票年齢や、公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められ、国政上の重要な事項の判断に関して、18歳、19歳の方を大人として扱うという政策が進められてきたことを踏まえ、民法においてもその政策が踏襲された結果といえるかと思います。
また先に述べたように世界的に主流である成年年齢18歳という基準に合わせた結果ともいえます。

3.いつから成年年齢に達するの?

成年年齢を18歳に引き下げることを内容とする「民法の一部を改正する法律」は、2022年4月1日から施行されます。

2022年4月1日の時点で、18歳以上20歳未満の方(2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの方)は、その日に成年に達することになります。2004年4月2日生まれ以降の方は、18歳の誕生日に成年に達することになります。

4.今後、18歳でできること・できないこと

できる

先ほども述べたように、民法でいうところの成年年齢とは単独で契約を締結することができる年齢という意味と、親権に服することがなくなる年齢という意味があります。成年年齢の引き下げによって、18歳、19歳の方は携帯電話の購入、アパートの契約、ローン契約などの様々な契約関係から遺産分割協議などの参加も親の同意なしに一人でできるようになります。

また親権に服することがなくなる結果、自分の住む場所を自分の意志で決めたり、進学や就職などの進路決定についても、自分の意思で決めることが出来るようになります。

その他、10年有効パスポートの取得や、公認会計士や司法書士などの国家資格に基づく職業に就くこと(最も試験への合格が必要なのはいうまでもないですが)、性別の取扱いの変更審判を受けることなどについても、18歳でできるようになります。

できない

成年年齢が引き下げられることによって出来るようになることが増える一方今まで通りすることができないことも自分を守るためにもしっかりと把握をしておきましょう。

成年年齢が18歳に引き下げられても、お酒やたばこに関する年齢制限については、20歳のまま維持されます。またいわゆるギャンブルといわれるもの(公営競技である競馬、競輪、オートレース、モーターボート競走)の年齢制限についても、20歳のまま維持されます。これは健康被害への懸念やギャンブル依存症対策などの観点から、従来の年齢を維持することとされています。

 18歳になって成年年齢が到来したからといってお酒やたばこが解禁になったと勘違いして法律に反した行動をとってしまわないようご注意ください。

今回の民法改正と共に各法律の法整備も合わせて必要になってきます。

例1:題名を改正する必要があるもの(未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法など)

例2:購入年齢を改正する必要があるもの(競馬法、自動車競技法など)

5.成年年齢引き下げの懸念点

消費者被害の拡大

民法では、未成年者が親への同意を得ずにした契約は、原則として取り消すことができるとされています(民法第5条第2項)。成年年齢を18歳に引き下げた場合には18歳、19歳の方は,未成年者取消権を行使することができなくなるため、悪徳商法などによる消費者被害の拡大が懸念されています。 政府は,義務教育などにおける消費者教育の充実(例:契約の重要性,消費者の権利と責任など)や,若者に多い消費者被害を救済するための消費者契約法の改正,全国共通の3桁の電話番号である消費者ホットライン188の周知や相談窓口の充実など,様々な環境整備の施策に取り組んでいく方針とのことです。

成人式開催の時期

成人式の時期や在り方に関しては、現在法律による決まりはなく、各自治体の判断で実施されています。

政府は成年年齢引下げを見据えた関係者の意見や各自治体の検討状況を取りまとめた上で情報発信し、各自治体がその実情に応じた対応をすることが考えられています。

6.女性の婚姻年齢の引き上げ

成年年齢の引き下げと共に今回民法改正されるものに女性の婚姻年齢の引き上げがあります。成年年齢の引き下げに関する改正がインパクトが大きいだけに、こちらはあまり知られていない改正かと思いますが、こちらも大きな改正の一つとなります。

現行、女性の婚姻年齢は16歳ですが、こちらも2022年4月1日以降は女性の婚姻開始年齢を18歳に引き上げ、男女ともに18歳に統一となります。

改正の意図とは、現在男女間において社会的・経済的な成熟度といった観点から特段の違いはないと考えられることから,婚姻開始年齢における男女の取扱いの差異を解消することにしたものとのことです。その上で,高校等進学率が98パーセントを超えていることなどから、婚姻をするには、少なくとも18歳程度の社会的・経済的成熟が必要であると考え、女性の婚姻開始年齢を18歳に引き上げることとしたものです。

女性の婚姻開始年齢の引上げについても、2022年4月1日から施行されます。

なお、2022年4月1日の時点で既に16歳以上の女性は引き続き、18歳未満でも結婚することができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。18歳から成年になるといっても意外と出来ないことも多いと感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この法律はあくまでも18歳から個人の人権を尊重する趣旨でできていると思いますので、身体に悪影響を及ぼすことはできず、逆に個々の権利や人権が尊重できるような改正になっているのではないかと思います。

司法書士の仕事に直結する事でいえば、ご相続が発生した時にご相続人間の遺産分割協議の場に同席させて頂く場面が多々あるのですが(相続の流れについてはこちらをご確認ください)、現在では18歳や19歳でも未成年者は遺産分割協議に参加できません。

そのため、親権者の代理や場合によっては特別代理人を家裁に選任しなければならず、手間や時間が掛かってしまっていました。ただ実際にお客様とお話してみますと、18歳や19歳の人たちは既に心身共に成熟し、自己の考えもはっきりとしていると感じておりましたので、今回の改正は妥当なものだと感じています。

逆に契約やローンの借り入れなどを親権者の同意なしにできるとなると、今後社会経験の少ない20歳未満の人たちが不法な貸金業などに騙される場合も増えることがあるのではないかという懸念もあります。契約やローンの借り入れなどは改正後も親の意見などを尊重し、慎重に行う必要があるのではないでしょうか。

個人的には同業者である司法書士高校生第1号がいつ誕生するのかなあという点に興味があったりします。若くても優秀な人たちが早くから活躍できる社会はいいですよね。

今回は成年年齢引き下げについて、取り上げさせていただきました。詳しくは法務省のホームページをご参照ください。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html

ご相続人の中に未成年者がいらっしゃる場合のご相談も承っております。

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