こんにちは。司法書士法人リーガル・フェイスです。
令和3年4月に所有者不明土地を解消するための方策として民法及び不動産登記法等の一部改正に関する法令等が公布され、相続登記の義務化が令和6年4月1日に施行されることが決定しました。
相続登記の義務化だけではなく、令和5年8月に「民法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」が公布され、所有権の登記名義人に関する氏名又は名称及び住所の変更登記の義務化も令和8年4月1日に施行されることが決定しました。
相続登記義務化の詳細は、下記の記事もご参照ください。
いよいよ本年(令和6年)4月1日から相続登記が義務に!10万円の罰則⁉
以下、変更登記の義務化について現時点で判明していることをご紹介いたします。
目次
1.概要
まずは所有権登記名義人の氏名、名称、住所等の変更登記義務化について概要を解説いたします。
<期限は2年!>
所有権登記名義人の氏名若しくは名称(法人)又は住所について変更があったときは、その変更があった日から2年以内(相続登記は知った日から3年以内)に、変更登記の申請をしなければなりません(改正後の不動産登記法=以下「新不登法」という=第76条の5)。
<怠った場合は、5万円以下の過料あり>
前記の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由※がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料(新不登法第164条第2項)になることがあります。
※現時点では、何が正当な理由なのかは不明です。
過料については、法務局から通知を受けた裁判所がその具体的数値を決定しますが、どのような場合に法務局が裁判所に通知を出すのかは、今後、法務省令等で規定が設けられる予定です。
また、所有権の登記名義人の住所等の変更登記義務化は、令和8年4月1日の施行日前に所有権を取得した場合にも適用されます。
不動産取得後に住所等に変更があった場合は、その変更日又は施行日のどちらか遅い日から2年以内に変更登記をすることとなります。(令和3年法律第24号附則第5条第7項)
早めに変更登記することが必要であるとご留意ください。
変更登記の申請をするタイミング
■所有権の登記名義人が個人の場合:その住所又は氏名の変更があった時
■所有権の登記名義人が法人の場合:その商号・名称又は本店に変更があった時
変更登記の申請は変更が生じたときから2年以内と期限が設けられたので、期限内に申請することを忘れないよう注意が必要です。
※その変更日又は施行日のどちらか遅い日から2年以内
2.変更情報が登記簿へ反映される仕組み
続いて、法務局が所有権登記名義人の氏名又は名称及び住所の変更情報を不動産登記記録に反映させる仕組みについて簡単に解説いたします。
<改正法施行後は、登記官の職権で変更登記される場合も>
変更登記申請をすべき義務がある者が申請する場合以外に、登記官が「住基ネット」又は「商業・法人登記システム」から変更情報を取得し、法務省令の定めるところにより職権で変更登記ができるようになりました(新不登法第76条の6)。
ただし、所有権登記名義人が個人の場合は、その申出があるときに限られます。
※DV等による被害者保護のため、住所情報に公開の制限を設ける場合などは職権で変更できません
令和7年2月時点で法務省が公表する仕組みを次にご案内します。
<法人が所有権の登記名義人となる場合>
令和6年4月1日から、法人が所有権の登記名義人となる場合の登記事項として、会社法人等番号その他の特定の法人を識別するために必要な事項(以下「法人識別事項」といいます。)が追加されました。
法人を所有権の登記名義人とする登記の申請書には、次の(1)から(3)の法人識別事項を記載しなければならなくなりました。
(1) 会社法人等番号がある法人・・・会社法人等番号
(2) 会社法人等番号がない外国法人・・・設立準拠法国
(3) 会社法人等番号がないその他の法人・・・設立根拠法
上記のうち (1)会社法人等番号がある法人で、その会社法人等番号が登記されているときは、会社法人等番号を検索キーとして、商業・法人登記システムの情報に基づき、登記官が職権で法人の名称又は住所の変更の登記をすることが想定されています(会社法人等番号を有しない法人は、対象ではありません。)。
なお、令和6年4月1日時点で既に所有権の登記名義人である法人は、法人識別事項が登記されておりませんが、法人識別事項を追加してもらうことを申出ることにより、登記官の職権で法人識別事項を登記してもらうことができます。
<個人が所有権の登記名義人となる場合>
令和7年4月21日から、個人が新たに所有権の登記名義人となる場合、登記官が定期的に住基ネットからの変更情報を取得できるように、登記申請の時に、検索用情報を提供(申請書に記載する)する必要があります。
検索用情報の具体的な内容は、次のとおりです。
(1) 氏名
(2) 氏名の振り仮名(外国人はローマ字氏名)
(3) 住所
(4) 生年月日
(5) メールアドレス
検索用情報は、氏名、ローマ字氏名、住所以外は登記記録上公示せず、登記所内部において保有するデータとして扱われます。
なお、令和7年4月21日時点で既に所有権の登記名義人となっている場合は、
①不動産の特定に必要な情報
②自己が登記名義人であることを証する情報
③検索用情報の内容を証する情報
上記の情報とともに、
別途、検索用情報の申出をすることができることになります。
この申出は、令和7年4月21日以降、簡易な方法でできるようになる予定とのことです。
<登記官の職権登記により、変更登記申請義務は履行済みとなる>
法人が所有権の登記名義人ある場合、法人の住所や名称等に変更があった場合、所有権の登記名義人への確認がされることなく、登記官が職権で変更登記を行うことになる予定です。
個人が所有権の登記名義人である場合に住所や氏名等の変更があったときは、法務局側から所有権の登記名義人に対し、住所等の変更登記をすることについての申し出たメールアドレス宛に確認を行います。
その了解(「申出」と扱う)を得たときに、登記官が職権で変更の登記をします。
登記官が職権で変更の登記をすることにより、登記申請義務は履行済みとなります。
3.所有不動産記録証明制度
所有権登記名義人の氏名又は名称及び住所の変更登記の義務付けに直接は関係しませんが、今回の法改正により、新たに所有不動産記録証明制度が創設されることとなりました(新不登法第119条の2)。
誰でも登記官に対し、手数料を納付して自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面の交付請求ができるようになります。
現在は、都税事務所又は各市町村の税務課において、名寄せでその管轄内の自らの所有不動産について網羅的に確認することができますが、新制度は法務大臣が指定する登記所の登記官に対して交付請求することを認めるものです。
ただし、自ら所有する不動産について、所有権登記名義人の氏名又は名称及び住所の変更を、その都度変更申請を行っていない場合は、本制度が交付請求した情報と一致したものを一覧的に証明するものであるため、不動産の網羅性等に関しては技術的な限界があります。
この新制度について詳細は下記リンクよりご確認いただけます。
まとめ
いずれにしても不動産を取得した場合には令和8年4月1日の施行を待たず、早めに氏名又は名称及び住所の変更を行うことが肝要です。
なお、法務省令は施行時期に合わせて定められるため、各手続きの詳細については後日改めてご報告したいと思います。
ご実家の不動産の名義人が、亡くなられた方のままになっているという方は相続登記が必要です。相続登記も今後義務化いたしますので、お早めにお手続きを済ませると良いでしょう。
相談事例「実家の不動産が、10年以上前に亡くなった父の名義のままです。」

四年制大学の法学部在籍時に、友人と一緒に司法書士資格の勉強を始める。大学を卒業した年に見事合格を果たした後、司法書士事務所へ入所し、商業登記を中心に経験を積む。その後、30歳を迎えることを機に一般企業の法務部へ転職。10年ほど司法書士業界を離れていたが、数年前に再び司法書士業界へ。そして幅広い業務経験を積むため、2022年リーガル・フェイスへ入所する。休日は2児の父として趣味の料理を振る舞う。得意料理はグラタン、好きな食べ物はラーメンと焼肉。