こんにちは。相続・商業課の中根です。
今回は、不動産の基本的な用語である『権利証』について、お話してみようと思います。
全くわからない方から、なんとなくイメージがつく方まで皆様に簡単に説明させていただきます。
1.登記済権利証とは?
登記済権利証とは、登記が完了した際に法務局から登記名義人に交付する書面で、不動産の権利を所持している又はしていたことを証明するものになります。
どのようなものかというと、以下の図のように登記申請書に受付日、受付番号、法務局の印が押されているものになります。昭和30年より前の登記済権利証は、この受付日、受付番号と法務局の印が分かれているものもあります。
よく「権利証」「登記済証」といわれていますが、こちらはいずれも同じ、登記済権利証を表しています。
但し、現在では、平成17年の不動産登記法の改正により、登記済権利証が廃止され、そのかわりに登記識別情報通知が発行されています。
もちろん、現在お持ちの登記済権利証は有効です。
東京法務局の各支局及び出張所において登記済権利証が廃止され登記識別情報通知が発行されるようになった日は以下の通りです。
全国の法務局で一斉に取扱いが変更になったわけではありません。
法務局 | 不動産の所在 | オンライン指定日 |
東京 | 千代田区、中央区、文京区、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村、小笠原村、八丈支庁の管轄区域(八丈町及び青ヶ島村を除く) |
平成17年12月5日 |
港出張所 | 港区 | 平成18年3月13日 |
台東出張所 | 台東区 | 平成19年10月29日 |
墨田出張所 | 墨田区、江東区 | 平成18年11月20日 |
品川出張所 | 品川区 | 平成19年8月6日 |
城南出張所 | 大田区 | 平成18年12月4日 |
世田谷出張所 | 世田谷区 | 平成18年3月13日 |
渋谷出張所 | 渋谷区、目黒区 |
平成19年2月19日 平成19年10月29日 |
新宿出張所 | 新宿区 | 平成19年2月19日 |
中野出張所 | 中野区 | 平成17年9月20日 |
杉並出張所 | 杉並区 | 平成20年2月12日 |
板橋出張所 | 板橋区 | 平成19年11月19日 |
豊島出張所 | 豊島区 | 平成19年2月5日 |
北出張所 | 北区、荒川区 | 平成19年5月28日 |
練馬出張所 | 練馬区 | 平成18年12月4日 |
江戸川出張所 | 江戸川区 | 平成20年1月21日 |
城北出張所 | 足立区、葛飾区 | 平成19年2月5日 |
八王子支局 | 八王子市 | 平成19年1月22日 |
町田出張所 | 町田市 | 平成20年1月21日 |
立川出張所 | 立川市、昭島市、武蔵村山市、東大和市、国分寺市、国立市、日野市 |
平成20年2月12日 平成17年12月5日 平成19年8月20日 |
西多摩支局 | 青梅市、福生市、羽村市、あきる野市、西多摩郡 |
平成19年8月20日 |
府中支局 | 武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、小金井市、狛江市、多摩市、稲城市 |
平成17年12月5日 平成18年2月6日 平成19年8月20日 |
田無出張所 | 小平市、東村山市、西東京市、清瀬市、東久留米市 |
平成19年5月28日 |
登記識別情報通知も登記済権利証と同様に、登記が完了した際に法務局から登記名義人に交付する書面で、不動産の権利を所持している又はしていたことの証明になります。また、どちらも再発行が出来ない書類ということも同様です。
ただ、注意しなければならないことがあります。
それは登記識別情報通知の場合は「情報が重要である」ということです。
登記済権利証の場合、登記申請の際に原本が必要になります。しかし、登記識別情報通知は記載されている情報さえあれば、登記済権利証の原本を持っていることと同じことになります。つまり、極端に言えば登記申請の際に、登記識別情報通知に記載された情報をメモしただけの紙でも、登記済権利証のかわりになるのです。
2.紛失に気づいたら
登記済権利証や登記識別情報通知を紛失してしまったり、盗難にあったりした場合、それのみで権利を動かしたり、担保権を設定されたりすることはありません。
上記のような登記申請には、登記済権利証や登記識別情報通知の他に、実印及び印鑑証明書が必要になってくるためです。
そのため、まず実印がしっかり管理されているか確認をしてください。
その後、盗難にあった可能性があれば、警察に被害届を提出してください。
3.権利証の紛失・盗難時の対応
登記済権利証や登記識別情報通知を紛失してしまったり、盗難にあったりした場合でも、それだけで権利がなくなるというものではないことはご理解いただけたでしょうか。
登記済権利証や登記識別情報通知は、あくまでも権利を証明するものになります。
ただ、不正な登記が行われる可能性もゼロではありません。
その場合に対処する手続きが2つあります。
①不正登記防止申出
不正登記防止申出の制度は、不正な登記がされる差し迫った危険がある場合に、申出から3カ月以内に不正な登記がされることを防止するための制度です。
ただ、権利の移動を禁止する制度ではありません。
こちらは、登記済権利証の盗難にあった場合のみならず、印鑑証明書や印鑑の盗難にあった場合も使用できます。
この申出を申請するには、警察等の捜査機関に被害届を提出したり、告発したりや市区町村に印鑑証明書を無効とする手続き等を取る必要があります。
そのため、単純に紛失ということでは使用できません。
不正登記防止申出の手続きは、登記名義人、又はその相続人が、上記の不正登記防止申出書を記載し、該当の法務局に出頭します。やむを得ない事情がある場合は委任による代理人が出頭します。
申出所以外に必要な書類は、印鑑証明書になります。相続人の場合は相続人であることがわかる戸籍抄本又は戸籍謄本も必要になります。
②失効の申出
失効の申出は、「登記識別情報通知」を失効させる申出になります。
これは、①の不正登記防止申出と違い、申出をする理由を問いません。
紛失してしまったり、盗難にあったりしていなくても、いつでも失効の申出が出来ます。
登記名義人又はその相続人が、上記内容を記載し、提出します。委任による代理人でも申請はできます。
申請方法は、オンラインで申請するか、書面で提出します。
また、添付書類として登記識別情報通知を提供する必要はありませんが、印鑑証明書が必要になります。
相続人が申請する場合は、相続人であることがわかる戸籍抄本又は戸籍謄本も必要になります。
まとめ
紛失してしまったり、盗難にあった場合は、被害を最小限に抑えられるよう
上記の手続きをとっていただくのが最善です。
ご自身で手続きすることが難しい場合は、弊所までご連絡をいただければと思います。
登記済権利証や登記識別情報通知は、権利そのものではないですが、それを証明する非常に大切なものです。
皆様にとって一番良い方法は、大切に登記済権利証や登記識別情報通知を管理及び保管していただくことかと思います。
書類の紛失がある方は、一度ご相談くださいませ。
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