今回は自筆証書遺言に記載できる10項目の後編です。
前編をまだ読んでいない方はこちらから!
その6.遺産分割の禁止
本来、相続人は相続が開始するとすぐに遺産分割協議ができるのですが
遺産分割そのものを禁止することもできます。
ただし禁止できる期間は5年以内となりますのでご注意ください。
この遺産分割の禁止についてどういった場面で用いられるのか、
少しわかりにくいと思いますので具体例を2つ挙げてみます。
例1 被相続人の妻が妊娠している場合
被相続人と妻の間に子供がいるにも関わらず、まだ生まれていなければ「子供がいない」とみなされてしまいますよね。その状況で遺産分割協議を始めてしまうと、被相続人の親に相続権が行ってしまいます。そこで、子供が生まれるまでの期間は遺産分割を禁止すると相続権が親に行くことはなく、希望する相続順位を守ることができるのです。
例2 相続人が未成年の場合
相続人が未成年の場合に遺産分割協議をするには、代理人を立てる必要があります。
その代理人が未成年の親であればそこまで問題はないと思われますが、第三者が代理人となる場合は少し不安が残るかもしれません。
例えば、第三者の代理人を立てなければならないけれど、子供は19歳。
そこで遺産分割を1年遅らせることができたら、子供は成人となり代理人を立てずに済む事になりますよね。
この遺産分割の禁止については、遺言として遺す以外の方法はありません。
被相続人亡き後に、相続人の間でいくら遺産分割を止めたくとも禁止する事は出来ないのです。だからこそ、遺産分割を禁止する可能性がある方にとっては特に重要な項目となるかもしれません。
その7.相続分の指定と指定の委託
被相続人は遺言で、共同相続人の相続分を定める事ができます。相続分が指定されたときは、法定相続分の規定は適用されません。
「土地と家は長男、預貯金はすべて長女」など分かりやすい分割であれば問題ないのですが、そう綺麗に分割できない事もあると思います。
遺言に割合が記載されていなければ、法定相続分に基づいて分割されてしまいますので
ご自身の想いをしっかりと遺すべく割合も細かく検討・記載しましょう。
また、法定相続分の割合を決める行為を第三者に委託することも可能です。
委託する場合はその旨も記載しましょう。
その8.遺産分割方法の指定と指定の委託
被相続人は遺留分に関する規定に反しない限り、自由に財産を処分する事ができます。これは民法上に定められたルールです。
遺産分割の指定とは、
①どのように遺産分割を行うのかを指定する(現物分割、換価分割、代償分割などを定める)
②遺産分割により特定の遺産を特定の相続人に取得させる
などがあります。
例えば自分が亡き後、自宅に住む人がいなくなる場合は「不動産を売却してその換価代金から子ども2人が2分の1ずつ売却代金を取得する」等指定できるのです。
その9.遺言執行者の指定
遺言はただ書いて終わりではなく、ご自身の死後にその遺言の内容が確実に実現して初めて意味のある書面となります。
ここまでご紹介してきた法的に有効な項目を実現するためにも必要なのが、
“遺言執行者”の存在です。
遺言執行者によって、遺言の内容を確実に実現するための手続きが行われますのでその選任はとても重要な行為となります。執行を依頼したい親族や司法書士等を事前に決めて遺言にその旨を記載しておきましょう。
その10.遺言減殺方法の指定
遺留分権利者(遺留分についてはまた別の記事で…)から減殺請求を受けた際に、減殺指定を行うことができます。
例えば誰か特定の一人に「財産すべてを相続させる」と遺言に記載したケースで考えてみましょう。
このような状況になると、本当は遺産をもらえるはずだった相続人が、財産を受け取る人に対し「いくらか相続させて」と請求する可能性があるのです。
もちろん、これを請求する権利は法定相続人に限り認められています。
この「本来もらえるはずだった財産に対して、いくらか保証してくれ」と言うことを
遺留分侵害額請求と言います。
では、もしも遺留分侵害額請求を受けたらどの財産で減殺(支払うこと)すれば良いのでしょうか。
少しわかりにくいかもしれませんが、要するにこの減殺する財産の順序を遺言で指定することができるのです。
※通常は相続財産すべてから按分(基準に比例して割り振る事)しなければなりません。
簡単に言えば、
「もし遺留分侵害額請求がなされたら、預貯金から減殺してください」
ということです。
まとめ
以上が自筆証書遺言に書くことのできる10項目でした。
最後になりますが、遺言を書く上で最大のポイントは“伝え方次第”という事です。
どんなに法的に有効な項目を並べても、相続人間にその“想い”が伝わらなければトラブルへと発展する事も十分あり得ます。
どうしてそのような分割方法にしたのか、どんな想いがあるのか。
しっかりと丁寧に想いを書いておくのが良いかもしれないですね。
もしかすると、相続人が遺言を見つけて手に取り、読んだ際に
内容に不満を持つ人が出てくるかもしれません。
そしてもしそのような状況になった時。
遺言に記された“想い”そのものに法的効力はございませんが
不満に感じた相続人が冷静さを取り戻す事ができるのは、遺言者本人の言葉だったりするのです。
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