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遺留分とは? 債務は控除できる? 簡単、わかりやすく解説!

遺留分とは? 債務は控除できる? 簡単、わかりやすく解説!

皆さまこんにちは。司法書士法人リーガル・フェイスの佐藤です。

今回のテーマはタイトルにもある通り、遺留分の話題です。

最近ご紹介した「自筆証書遺言の書き方」の中でも“遺留分”という言葉が出てきましたよね。

今日はその“遺留分”について図を使いながら改めておさらいしていきますので、

よければ参考にしてみてくださいね。

1.遺留分とは?

遺留分とは、

「一定の法定相続人に対して最低限保障された相続分の割合のこと」

であり、被相続人の生前処分または死後処分によっても奪われることはございません。



少し難しい言葉かと思いますので、事例をもとに考えてみましょう。

例えば次の相続があったとします。


被相続人は息子Aに財産のすべてを相続させたいと遺言を書いていました。

本来であれば被相続人の妻と、息子A、息子Bの三人が相続人。

しかし今回のような遺言があった場合、息子A以外は財産を1円たりとももらえないのでしょうか。


そこで「遺留分」の話が持ち上がります。

実は、遺留分の権利を持つ一定の法定相続人であれば、最低限保障された相続分の割合を請求する事ができるのです。

では、“一定の法定相続人”とはどこまでの範囲でしょうか。

次の項目では遺留分権利者の範囲について確認していきましょう。



2.遺留分の権利が認められているのは誰?

遺留分の権利者については次のような定めがあります。

①相続人のうち直系卑属、直系尊属、配偶者は遺留分を有する(※兄弟姉妹は遺留分を有さない)

②胎児は民法886に定められている通り、すでに生まれたものとみなされるため子として遺留分を有する

③直系尊属が遺留分権利者の場合は代襲相続の規定が準用されるため、代襲相続の場合には孫、曾孫も遺留分権利者となる

④相続欠格者、相続人から廃除された者、相続放棄した者は法定相続権を失っているため遺留分を有さないが、その者の代襲相続人(※相続放棄の場合を除く)あるいは次順位の相続人は遺留分権利者となる


上記の内容を踏まえて今回の例に戻ると、登場人物全員に遺留分があることになりますね。



3.遺留分の割合は、誰がどのくらい?


相続人全体の遺留分割合は、相続人が誰になるのかによって変わります。

具体的には以下のように定められています。

①直系尊属のみが相続人の場合→被相続人の財産の3分の1

②直系尊属または配偶者が相続人の場合→被相続人の財産の2分の1

③兄弟姉妹は相続人であっても遺留分を有さない

④ここでの「被相続人の財産」とは「遺留分算定の基礎となる財産」を示す



これを今回の例で考えてみましょう。

例えば相続財産の総額が5,000万円だった場合の遺留分はいくらになるでしょうか。


 

先述の表に当てはめて考えると、配偶者の遺留分は1,250万円、子供の遺留分は625万円となります。法定相続分に比べると受け取れる財産額は大きく下がってしまいますが、0円ではない事がわかりますね。このように、遺言の内容通り受遺者に全財産が相続されるわけではなく、「法定相続人が財産を受け取る権利」が遺留分によって保障されているのです。


4.遺留分があるとわかったらどうする?

遺留分があると分かれば、遺留分権利者は受遺者に対して「遺留分侵害額請求」を行使する事ができます。

つまり、配偶者と息子Bは、息子Aに対して遺留分の侵害額を請求する事ができるのです。

今回の場合で言えば、息子Aは被相続人の配偶者の遺留分1,250万と、息子Bの遺留分625万を合わせた総額1,875万円を侵害している事になります。

息子Aが遺留分侵害額請求を受けた場合、原則拒否する事ができないため相続財産5,000万円の中から1,875万円を支払わなければなりません。

民法改正ポイント!


これまで遺留分が侵害された際に請求する「遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)」については相続財産全体にかかるものであったため、相続財産に不動産がある場合等は請求する側と、請求される側で共有の状態になってしまうデメリットがありました。

加えて不動産が共有状態になると、売却したい場合にも双方の合意が必要となりますし、遺留分に応じた割合が不動産の持分となるのでキリの良い数字で不動産の持分を決められず、複雑になってしまいます。

そこで民法が改正され、遺留分の侵害額を債権として請求できる事になったのです。つまり、相続財産に不動産があったとしても現金で遺留分を請求できるという事。

この改正によって不動産の共有状態を防ぎ、よりスムーズな相続が行えるようになりました。詳しくは過去の記事の中でも遺留分に関する記事をアップしておりますので、もしよければそちらをご確認くださいませ。


5.遺留分を計算する際に、債務は控除できる?


「相続財産」と一口に言っても、プラスの財産もあればマイナスの財産(借金の事)もありますよね。

そこで、遺留分を算定する際に負債があった場合は控除できるのでしょうか。


答えはYESです。

 

被相続人に債務があった場合、遺留分算定の際に遺産総額から控除する事が可能です。

債務を控除した上で法定相続割合を計算し、遺留分の割合を決めるのです。


6.まとめ

以上が遺留分に関する概要でした。

いかがでしたか?

 

遺言の中で相続財産の割合に気を配らなければならない理由は、この「遺留分」を考慮しなければならないからという事ですね。

遺留分の侵害額を請求されると受遺者は原則支払いに応じなければならないので、初めから遺留分の額を割り出し、配慮した財産配分にする事が争いの防止となるのです。


遺言書を作成する際は、遺留分を考慮した内容で作成することがポイントです。
リーガルチェックも承っておりますので、お気軽にご相談くださいませ。

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