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配偶者の居住権を保護するための方策 ④   (新民法第1028条~1036条、令和2年4月1日施行)

配偶者の居住権を保護するための方策 ④   (新民法第1028条~1036条、令和2年4月1日施行)

配偶者居住権に関する規定は、令和2年4月1日以降に開始した相続に対して適用されます。今回は配偶者居住権の登記について説明をしていきます。

過去3回のコラムをまだ読んでいない方は下記のリンクからチェックしてみてください。

「配偶者の居住権を保護するための方策①」

「配偶者の居住権を保護するための方策②」

「配偶者の居住権を保護するための方策③」



1.配偶者居住権の登記の対抗力等

  居住建物の所有者は、配偶者に対し配偶者居住権の設定登記を備えさせる義務を負います(法第1031条第1項)。また、配偶者居住権を登記したときは、その後にその不動産について物件を取得した者その他第三者に対抗することができることになりました(同条2項で準用する法第605条)。

  今回の民法改正により、不動産登記法も改正され、登記できる権利として配偶者居住権が加えられ(同法第3条第9号)るとともに、同法第81条の2が新設され、配偶者居住権の登記事項として、同法第59条各号のほか、①存続期間、②第三者に居住建物の使用又は収益をさせる旨の定めがあるときは、その定めが登記事項とされました。なお、配偶者居住権の設定登記の仮登記も可能となっており、賃借権の登記に類する手続き・登記事項となっています。

  ちなみに、登記にかかる登録免許税は、建物の評価額に対して、配偶者居住権の設定登記は1000分の2、仮登記は1000分の1、変更もしくは抹消登記は、1000円となりました。

2.配偶者居住権の設定の登記

(1)登記の申請

   登記権利者:配偶者

   登記義務者:居住建物の所有者  とする共同申請になります。

  なお、遺贈の場合に、遺言執行者があるときは、当該遺言執行者が登記義務者の立場から申請をします。

  また、配偶者居住権の設定登記は、居住建物の所有者を登記義務者とするため、前提として、居住建物の相続や遺贈を原因とする所有権移転登記がされていることが必要になります。

(2)申請情報等

       ア 配偶者居住権が成立するためには、①配偶者が相続開始時に居住していたこと(法第1028条第1項)及び②被相続人と婚姻をしていたことを要しますが、申請時に提供する登記原因証明情報の中にその旨が明らかになっていれば、配偶者の住民票や被相続人の住民票の除票を提供することを要しないこととされました。

  イ 登記原因

  ・登記原因が遺産分割の場合:年月日遺産分割

  ・登記原因が遺贈の場合  :年月日遺贈

  ・登記原因が死因贈与の場合:年月日贈与

  ウ 存続期間

  ・定めがない場合:「存続期間 配偶者居住権者の死亡時まで」

  ・定めがある場合:「存続期間 年月日から何年又は配偶者居住権者の死亡時までのうち、いずれか短い期間」

  なお、存続期間が定められた場合は、その延長や更新はできませんが、配偶者居住権の設定登記後に、期間の短縮を内容とする変更登記は可能とされています。

  エ 使用・収益をさせる旨の定め

  配偶者居住権を取得した配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ第三者に居住建物の使用又は収益をさせることができないとされているところ(法第1032条第3項)、第三者に居住建物の使用又は収益をさせることを許す旨の定めがあるときは、その定めを登記することができるとされました(改正不動産登記法第81条の2第2号)。

(3)配偶者居住権の抹消登記等

  ア 配偶者居住権の消滅事由

   ・存続期間の満了(法第1036条で準用する法第597条第1項)

   ・配偶者の死亡(法1036条で準用する法第597条第3項)

   ・居住建物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合(法第1036条で準用する法第616条の2)

  上記の配偶者居住権の登記の抹消は、配偶者を登記義務者、居住建物の所有者を登記権利者とする共同申請となります。

  ただし、配偶者死亡による抹消登記は、不動産登記法第69条の規定により、登記権利者(建物の所有者)が単独で抹消を申請することができます。

  なお、配偶者居住権は、譲渡することができないことから(法第1032条第2項)、配偶者居住権の移転等を内容とする登記の申請はできません。

  以上、4回に分けて配偶者居住権に関する事項を説明してきましたが、具体例はこれから発生しますし、詳細については十分に説明もできていないことから、何かありましたら、リーガル・フェイスの相続・遺産承継グループに問合わせしてください。

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