昨日の中日新聞(名古屋ではメジャーな新聞です!)でこんな記事を見つけました。
「高齢者の金融資産管理ー事前に家族で名義分けをー」
内容を要約するとこんな感じです。
『夫が脳卒中で倒れて意識不明。今後の生活や介護のために夫の株を売ろうとしたが、証券会社に本人の承諾がないと売却できないといわれてこまっている。
こんな場合は成年後見人制度を利用しましょう。でも、手続には時間がかかるから、できれば不慮の事態に備えて事前に資産を家族で分けとくといいね!そのときは贈与税かからないように気を付けてね!』
成年後見制度は判断能力が欠けてしまった人の財産管理や契約行為を支援する制度です。家族らの申し立てで、家庭裁判所が配偶者や子供、司法書士や弁護士などの専門家などを後見人に選任します。
後見人は被後見人(判断能力が欠けた人)の財産を管理し、財産の処分が必要となった場合には家庭裁判所と相談または許可を得たうえで被後見人にかわって財産の処分をすることが出来ます。
株式の売却だけでなく、不動産の売買の場合でも同様に成年後見制度は利用されています。
例えば不動産(居住用)の売主が高齢で判断能力が欠けてしまっている場合、司法書士としては本人の売却の意思が確認できない以上、売買にGOサインを出すことはできません。
しかし、売主が老人ホームに住んでいて、売買対象の不動産が使われていない上、入居費用等の支払いのために資金が必要な場合など、売却をした方が本人のためになることもあります。
そのような場合、成年後見人選任を申し立て、家庭裁判所の許可を得ることで不動産を売却することが可能になります。
ただ、「おじいちゃんの不動産を売りたいから成年後見制度を使おう!」と考えている方は例えば以下のような注意が必要です。
①簡単にはやめられない
一度成年後見人が選任されると、正当な事由がない限り、辞任することが出来ません。
被後見人が死亡するか、判断能力が回復するまで続きます。親族が後見人になった場合は財産管理業務が負担となりますし、専門家が後見人になった場合は毎月費用が掛かります。
不動産の売却が終わったら後見人を辞めよう、というわけにはいかないのです。
②自由な財産の処分が制限される
成年後見制度は成年被後見人の財産を守るための制度です。家庭裁判所に被後見人の財産や生活の状況、後見事務の内容を報告する必要があります。収入や支出を記録し、領収書などの資料も保管しなければいけません。
例えば、キャッシュカードでおじいちゃんの預金から孫へのおこずかいを引き出すとか、妻に急な出費があったので夫の預金からお金を借りるなど、そういったよくありそうなことも家庭裁判所から注意を受ける可能性があります。
成年後見制度を利用するかどうかはメリット、デメリットを考えたうえ慎重に判断されるのがよいかと思います。